今回の「まんまるの輪」は、光が丘エリアでまんまる薬局の店長を務めるゆうやさんへのインタビューです。テーマは、いまゆうやさんが力を注いでいる「地域の勉強会」について。
薬局のまわりには、たくさんの団地。半径2〜3kmに1,500世帯・1,300人以上が暮らすこのエリアで、ゆうやさんは施設・薬局・団地の3つの場所で勉強会を開いています。その根っこにあるのは、「在宅医療という選択肢を、知らないまま苦しむ人をなくしたい」という思いでした。
自分の足でチラシを1,500部ポスティングし、施設や団地の管理人さんに一軒ずつ挨拶に行く。「まずは自分から知ってもらわないと」——そんなゆうやさんの、地に足のついた”草の根運動”のいまをお届けします。

そもそも、なぜ勉強会を始めたのか
いちばん最初のきっかけは、「地域の人たちに、自分から知ってもらわないと難しいな」と思ったことでした。
わたしたちの在宅医療は、もともと店舗の拡大でつながりができていたので少しずつ広がっていました。でも、外来や地域の人たちに知ってもらうのは、自分から動かないとなかなか難しい。いま薬局があるのは、団地がたくさん集まっているエリアなんです。半径2〜3kmに1,500世帯くらい、1,300人以上の方が住んでいる。
「こんなにいい環境なんだったら、まず自分から知ってもらわないといけないよな」——そう思ったのが、勉強会を開こうと思ったスタートでした。
施設・薬局・団地。3つの場所で開く勉強会
いろいろなところに突撃して挨拶に行くうちに、近くの介護福祉の施設のセンター長さんと知り合わせてもらいました。練馬区がやっている、高齢者の方が遊びに来られる施設です。
そこで3ヶ月に1回くらいのペースで、熱中症や季節性の疾患、お薬の飲み方・使い方といったテーマで勉強会を開いています。これまでで6回。いまも続けているのですが、センター長さんが「せっかくここまでやってくれたんだから、50人・100人くらい集められるキャパがあるから、私が集めるよ」と声をかけてくださって。来年は在宅医療についての勉強会を、もっと大きな規模でやろうという話も持ち上がっています。続けてきてよかったな、と思っています。
2つ目は、薬局の中で開く勉強会です。外で勉強会をやれば知ってもらえるけれど、「ここに薬局があるんだよ」ということを知ってもらったほうが、本当に困ったときに「あそこに行けば、とりあえず助けてくれる」と思える場所になれる。そんなエリアになりたくて始めました。広報は、自分でチラシを1,500部ポスティングしまくるという方法です。いまのところ2回開催して、1回目は2人、2回目は4人。少人数ではあるけれど、確実に認知はされてきているんじゃないかなと感じています。

そして3つ目が、団地の管理人さんと開く勉強会。これは今週、初めてやります。営業中から挨拶に頻繁に行かせていただいていたら管理人さんと知り合えて、自分の思いを伝えたら、すごく賛同してくれたんです。団地には月に1回、集会のような場があって、「そこでやってみませんか」と招待してもらえました。3号棟・4号棟の方が15人ほど集まります。団地の施設を直接借りて勉強会ができるようになったんです。

裏テーマは、「在宅医療を知っているのが当たり前」の街をつくること
最初は「知ってほしいだけ」だったのですが、だんだん「近くに住んでいる人たちが在宅医療を知っていることで、その人の幸福度が変わるんじゃないか」と思うようになってきました。
団地では、独居や孤独死がすごく問題になっています。病院に行けなくなってしまった人が、在宅医療を知っているか知らないか。これって、ものすごく大きいと思うんです。知った上で選ばないのと、知らないまま一人で苦しみ続けるのとでは、天と地の差だなと。
だから自分のテーマとしては、この光が丘、もっと言えば練馬を、「病院に自分で行けなくなっても、私は一人じゃないんだ」と思える街にしたい。在宅医療をみんなが知っているのが当たり前くらいのエリアにしたいんです。「光が丘団地に住んでよかった」「まんまるさんが近くにあってよかった」——そう思ってもらえるように。それが、自分の中の裏テーマとしてあります。
「知っているか、知らないか」で心は軽くなる。自分がそうだったから
在宅医療の選択肢を知ると豊かになる——そう確信して言える理由は、自分自身の経験にあります。
自分の家で、おばあちゃんに何もできなかったことがありました。コロナのときだったので事情も違うかもしれないけれど、「家に来てくれる人、相談できる人がいるんだ」ということを知っているか知らないかだけで、どれだけ心が楽になるか。それは、自分の経験談として本当に強く感じています。
そもそも、自分たちが提供しているサービスが在宅医療なんですよね。それを「みんなが知っている」と、勝手に勘違いしていたと思っているんです。在宅医療を知っている人からすれば当たり前でも、視野を広げてみると、そもそも在宅医療の存在を知らない人のほうが大半。そのリアルを、自分はすごく感じています。
だったら、胸を張ってやっているサービスなのだから、まずは知らない人たちにも認知してもらう。この”草の根運動”を、自分はめちゃくちゃ大切だと思っています。

「心構え」を伝えることも、立派な勉強会
勉強会というと、薬の成分や結合といった学問的なイメージを持つ人が多いかもしれません。正直、自分はそこの学問力にコンプレックスもあります。
でも、いま自分がやっているのは、在宅医療とどう向き合うか、どういう心構えで患者さんと接するかという勉強会。これって、あるようで意外とないんじゃないかと思うんです。心構えさえしっかりしていれば、学問的な知識をすべて持ち合わせていなくても、患者さんにうまく応対できる場面はたくさんある。
それは在宅だけの話ではなくて、「自分らしく生きられる世の中をつくる」というhitotofromのあり方にも、抽象度を上げるとつながっていく。だからこれも、立派な勉強会なんだと思っています。場所を借りて、ディスカッション形式やワークショップ形式でやってみるのも面白そうだなと考えています。
これから——数を、続けていく
この地域活動は、自分が代表をやらせてもらっている店舗のメンバーにも、「ここで働いていてよかった」と誇りを感じてほしいという思いにもつながっています。誇りを感じてもらうには、地域に知ってくれている人がいないと難しい。それができるのは自分だなと思うから、いますごく動いています。
やることは、もう決まっています。あとはどれだけ継続できるか。本当に、数です。
目の前にある光が丘の団地の人たちすら巻き込めない人間が、世界に飛び出したいなんて言えない。まずはこのエリアを、「ここに住んでよかった」と思えるきっかけが少しでもできる街に。そんな人になれたらと思って、これからも一歩ずつ続けていきます。




