今回の「まんまるの輪」は、まんまる薬局でボランチとして働く松倉(まつくら)さんへのインタビューです。
薬剤師と一緒に患者さんのご自宅をまわる「ボランチ」という役割。まんまるに入って3年、松倉さんはこの仕事を「運ぶだけの人」ではなく、「人から人へ、心を届ける存在」だと言い切ります。
最近は月曜日の調剤室リーダーを任され、ボランチの想いをまとめた”クレドカード”づくりにも着手。「ボランチって、これだけの価値があるんだよ」——それを患者さんにも、仲間にも、もっと知ってほしい。そんな松倉さんの、いまと、これからをお届けします!

そもそも「ボランチ」って、何をする人?
まず大前提として、僕はボランチのことを「人から人へ、心を届けられる存在」だと思っています。これはボランチが絶対に忘れちゃいけないところ。うちに入ってくるなら、まずここを知らなきゃいけないと思っているくらい、大事にしています。
正直、お薬を「運ぶだけ」なら、薬剤師さん一人でもできると思うんです。実際そうやっている薬局さんもあるし、今ならAmazonだって配達してくれる時代ですよね。じゃあ、僕らが行く意味って何なんだろう。それはやっぱり、人にしか分からない気持ちがあるからだと思っています。
僕らが訪問することで、患者さんが喜んでくれたり、笑顔になってくれたり。「最後はやっぱり、まんまるさんでよかった」——そう言ってもらえる関わりをつくること。ロボットやAIには届けられないものを、僕らは届けられる。そこにボランチの意味があると思っています。
心を届ける相手は、患者さんだけじゃなかった
この3年、まんまるで働かせてもらって、すごく感じたことがあります。「人から人へ心を届ける」相手は、患者さんだけじゃないんだ、ということです。
もちろん、いちばんは患者さん。そこは絶対に外せません。でも、届けられる相手はもっといる。ご家族さん、一緒に訪問する薬剤師さん、看護師さんやケアマネさん、診療所の先生、なんなら近所の人まで。関わるすべての人に、心は届けられるんじゃないかと思うようになりました。
「まんまるのため」というより、一人の松倉として。患者さんに「松倉さんでよかった」と言ってもらえること。先生や診療所から「松倉さんなら大丈夫だよ」と相談してもらえること。そうやって信頼が生まれて、患者さんが”自分らしい最後”を生きられる。それがゴールなんだと思います。

「全ては思いやりと感謝から」——日々のあり方に落とし込む
じゃあ具体的にどうするか。僕がいちばんしっくりくる言葉は、まんまるの「全ては思いやりと感謝から」です。心を届けるって、結局ここから始まると思うんです。
たとえば、「ありがとう」や挨拶は絶対に欠かさない。患者さんが言ってくれた言葉には、すぐにレスポンスを返す。看護師さんが「こうしてほしい」と言ったことには、すぐに対応する。「こういう方法もありますよ」とこちらから提案する。「こう連携していきましょう」と、こちらから動く。
そういう一つひとつが、全部思いやりと感謝から始まっていくんじゃないかなと思っています。
なぜいま、ボランチを「もっと知ってほしい」のか
誰にいちばん知ってほしいかと聞かれたら、まずは、いまの患者さんとご家族さんです。
「ボランチの松倉が来てるよ」ということを、知ってほしい。「いつもの兄さんが来てくれた」でもいいし、なんなら「うるさいのが来た」でもいい(笑)。とにかく、僕が来たと認知してもらえるだけで嬉しいんです。
最近は、患者さんがお金のことまで相談してくださったり、「今度、おばあちゃんの分も頼もうと思ってるんだよ」と言ってくださったり。そういう関係になれてきた実感があります。だからまずは、患者さんとご家族に、ちゃんとボランチを認知してもらいたい。
その先には、ケアマネさんや診療所の先生。「ボランチがいると、こういう価値が生まれます。だから、ぜひまんまるに」と伝えていきたい。そして——この「心を届ける」仕事を、一緒にやりたいと思ってくれる仲間が増えたら、それがいちばん嬉しいです。
「一部の人の頑張り」を、「当たり前」にするために
正直に言うと、ボランチという役割の価値は、まだ社内にも完全には染み込みきっていないと感じています。前にボランチのミーティングを開いたのは、実はもう1年以上前。その間に新しいメンバーも入ってきました。
だからいま、「見える化」がすごく大事だと思っています。
意識している人は自然と意識できる。でも、そうじゃない人もいる。「この前ミーティングで話したこと、何だっけ?」となってしまう瞬間は、誰にでもある。
まず目に入る場所に置いておかないと、「そうだった」と思い出せないんですよね。
人を変えるのは難しい。でも、きっかけをつくることはできる。だから、ボランチの想いを見返せるカードを一枚持っておくとか、僕らがやっている意味を振り返れる場を、定期的につくっていきたい。「そもそも、人から人へ心を届けるって何だっけ?」——それをみんなで問い直す時間が、自分たちのマインドを上げるためにも必要だと思っています。
いま、力を入れていること
まず大前提として、「自分から動く」こと。これがいちばん強くあります。
いま任せてもらっているのが、月曜日の調剤室リーダーです。もともとは別のメンバーがやっていた役割を、「ボランチがやってみたらどうなるか」と、ゆうやさんが実験的に任せてくれました。ゆうやさんが月曜だけいない日に、僕を選んでくれた。そこにはきっと意味があると思うので、応えられるように、月曜はすごく貴重な時間だと思って動いています。
目標は、「みんなのスキルを底上げすること」。——分かりやすく言えば残業を減らす、という話につながるんですけど、正直、残業を減らすこと自体を目的にはしたくないんです。僕がこう動いたから、みんなのスキルが上がって、結果として残業も減っていったよね。そういう順番であってほしい。
もう一つ力を入れているのが、さっき話したボランチの”クレドカード”づくりです。実はスライドは、もう自分で一枚つくってあるんです。でも、あえてまだ出していません。
なぜかというと、誰かと一緒につくったほうが、その人にもちゃんと落とし込めるし、同じ熱量で動いてくれると思ったから。ちょうど、同じボランチで少し落ち込んでいた仲間がいて。「ボランチとして、何か一緒に成し遂げようよ」と声をかけたら、「松倉くんとなら、やりたい」と言ってくれて。いま、その仲間たちと一緒に進めています。

「バーサス」から、「仲間」へ
この3年で、いちばん変わったのは、上司や周りの人との向き合い方かもしれません。
最近、意識してやっているのが、上の人たちともっと話すこと。ゆうやさんはもちろん、まゆみさんとご飯に行ったり、いろんな人と一対一で話す機会をつくるようにしました。すると、アドバイスや意見をもらえるようになって、相談してもらえる回数も増えてきた。
以前の自分は、正直どこかで上の人たちを「バーサス(対立)」のように見ていた部分があったと思います。でも今は違う。同じ課題を、一緒に解決していく仲間なんだと思えるようになりました。
変えたことは、シンプルです。会話の回数を増やしただけ。ずっと同じ環境の人とだけ話していてもダメで、いろんな人と一緒に課題を見つけて、一緒に解決していく。それがまんまるのためになり、患者さんのためになるなら、動くべきだなと思ったんです。

これから、そして仲間へ
やりたいことは本当にたくさんあって、全部やると僕が倒れちゃうので(笑)、一つ、二つと絞りながら。心を届けることを続けつつ、自店舗だけじゃなく会社全体がいい方向に向くように、自分がどう動くかを、いまいちばんに考えています。
最後に、伝えたいことを聞かれて——正直、準備していなかったんですけど(笑)。でも、思ったことを言わせてください。
まずは、「ありがとう」。どんな薬剤師さんでも、管理薬剤師の皆さんでも、仲間でも、後輩でも。僕がこうしてボランチになれたのも、全員がいてくれたからです。誰か一人でも欠けていたら、ここまで想いは詰まっていなかったと思う。「ボランチって何が大切なんだろう」と考えられたのも、みんながいたから。だからまず、仲間には「ありがとう」を伝えたいです。

そして、管理薬剤師の皆さんへ。伝えたいのは一つ。
「薬局には、ボランチがいるぞ」。
もっと僕らにパスを回してほしい。任せてきてください。そう胸を張って言える存在に、これからもっとなっていきます。




