今回のまんまるの輪は、”対談”です。
まんまる薬局 CB目黒の薬剤師・皆川卓也さんと、まんまるのICTを伴走している堀川達也さん。記事の取材のはずが、いつのまにか「AIの時代に、人が自分の想いを話すことの意味」へと話が流れていきました。
その約1時間を、ほぼそのままお届けします。
「記事の枠も、何も考えないでください」——対談は、そこから始まった
堀川 今日は記事の分量とか、何も考えないでいただいて。皆川さんが話していて心が震えるような、「これは今この場で、7月24日の16時28分に喋ったほうがいいな」みたいなこと。極端に言うと、もうそっちをめちゃくちゃ優先していただきたくて。
皆川 ……そう言われて浮かんだのは、二つですね。
一つは、自分の人生で大きな転機といえば転職したこと。病院でこのまま極めていきたいと最初は思っていたのが、家庭環境も変わって、子どものことも見ていきたくなった。もう一つは「入院していた患者さんは、退院後どうなっているんだろう」という、ずっと気になっていたこと。その2点が大きくあって、転職活動を始めたんです。
もう一つ、これは記事にできるかどうか分からないですけど……実際に自分が病気をしたときのことも、話しておきたいなと思っていて。
——この日の前半は、皆川さんの転職と、入社3か月での闘病、そして復帰の話に費やされました。その内容は今後のまんまるの輪をご覧ください、ここから先は、そのあと二人の話が流れていった先を、そのまま載せます。
AIを1日14時間触っていて思う——仕事は”贅沢品”になる
堀川 なぜ最初にそんなお願いをしたのかというと——僕は毎日14、15時間くらいAIを触っているんですけど、触っていればいるほど、仕事がいらなくなってしまうなと思うんですよ。
この間の朝会で、松岡さんがライフワークとライスワークの話をされていましたよね。僕はライスワークの人たちは、仕事をしなくても生きていける状態になると思うんです。一方でライフワークの人たちは、仕事をしたくてしょうがない。お金がどうこうではなく、「仕事をしたい」と思っている。
だから僕は、仕事って、これから”贅沢品”になるんじゃないかと思っているんです。
皆川 ああ、たしかに。
堀川 ただこれ、どの立場で見るかで、良くもあり残酷でもあると思ってます。ライフワークの人たちに仕事が集中して、それが贅沢品になっていく。逆にライスワークの人たちは、仕事をしなくても生きていけてしまうから、むしろ心の病だったり、健康のほうを害する気がすごくしているんです。
「今日も仕事か」から「今日も働けるのが嬉しい」へ
皆川 実は、病気をしてから変わったことがあって。朝起きたときに「今日も仕事か」ではなく、「今日も働けるのが嬉しい」と思うようになったんです。
堀川 自分もそれです(笑)。「何時から誰々さんとミーティングか、うわ嫌だなぁ」ではなく、今日も働けるのが嬉しい。最近けっこうその状態です。
皆川 私の場合は、いつ死ぬか分からないという状態を初めて経験したことが大きくて。今こうして働けていることは、当たり前じゃないんだと気づけたんです。
堀川 なるほど。今の皆川さんのお話を伺って、より確信できたというかそれって大事だなと。こうやって話してても思いますが、各々が持っている具体的なストーリーも、経験しているプロセスも全然違うのに、同じところに行き着くのが面白いですよね、まんまる薬局。

背景を話さないと、ただのきれい事になってしまう
皆川 ただ、ここが難しいところでして……
「朝起きたときに、今日も働けて嬉しいと思える」——そう言葉にするだけなら簡単なんです。でも、裏側に自分の病気があったという背景を入れないと、ただのきれい事になってしまう。
かといって、そこを押しすぎると、「自分はこんな辛い思いをしたんだ」とアピールしているようで嫌なんです。難しいなと思うんですよね。
堀川 なるほど。
皆川 朝会でも、本当はあまりそういう発言はしたくないんです。誰かにはネガティブに受け取られてしまうかもしれない。それでも、せっかく話すならその想いまで届けたいと思って、前置きとして少しだけ話すようにしていて。
本来なら、話さなくてもいいことなんですけどね。ただ、自分はこの会社が好きなので。同じ思いを持ってくれる人が増えれば、私たちが目指しているところに絶対に届くと思っています。自分一人でやろうとしても絶対にできないからこそ、同じ思いの人を増やして、みんなで達成していきたいんです。
「◯◯が何件ありました、以上です」では、何も残らない
皆川 朝会で薬局長が話す場は、月に一度あります。
私はCB目黒にいるので、なかなかみなさんとお会いすることができません。だからこそ、そのタイミングで何か一言、自分の思いを伝えたい。ただの定例報告ではなく、みなさんが手を止めて、聞きたくなるような話を一つ乗せる。それを自分の目標にして、いつも考えて準備して話しています。
病院時代は、本当に”定例MTG”そのものでした。「◯◯が何件ありました。以上です」——正直、自分は何も頭に入ってこなかったんです。
でも、「この人、何か言うぞ」と思ってもらえたら、ちょっと手を止めて聞いてくれるかもしれない。「遠くにCB目黒の皆川っていうのがいるぞ」で終わるより、こういう感情を持った、こういう人なんだなと知ってもらえたほうがいい。そうすれば、自分の力になりたい、関わりたいと思ってくれる人が、きっと増えていく。
堀川 めちゃめちゃ分かります。数値だけ発表して、それにフィードバックがついて、はい終わり——だと、確かに入ってこないと思うんですよ。「言われたからとりあえずやっておこう」になって、内発的じゃない。

二元論では、台風を説明できない
皆川 先ほどの病気の背景なども記事にすること自体は、まったくNGはないんです。何を書いていただいても。ただ、変な風に伝わるのが、少しだけ嫌だなと思って。
堀川 僕も、そこめちゃくちゃ考えさせられています。
朝会の時間を共有している場で言うのが良いのか悪いのか、記事に残すのが良いのか悪いのか——人ってどうしても二元論で判断しがちじゃないですか。いまの話もそうですし。
でも、自然って二元論では説明できないと思うんです。台風だって、「ある・ない」で事実は言えるけれど、「台風とは何か」を説明するときに、あるかないかでは説明できない。当たり前のことなんですけど。僕、それにすごく近い感じがしていて。
網を揺らし続ければ、いつか渦になる
堀川 毎週だとしつこいかもしれないですけど、朝会でも、ふとしたタイミングで——今回みたいに皆川さんが福岡に行った翌日、たまたま話す場があったとか——そういうときに、嫌われる前提で伝えることを続ける。それが何よりの信頼になると思うんです。
やり続けると、共鳴する人が出てくる。気になって「あれ、なんでこの間泣かれてたんですか」とDMをくれる人が出てくる。嫌味でもネガティブでもなく、本当に気になって聞いてくるという。それが渦になって、台風みたいな力になっていくと思うんですよ。それって人為的じゃない。自然に起こっている。
だから朝会って、網を揺らす場だと思っていて。揺らし続けていれば、いつか台風ができあがる。

あの回のあと、会ったこともない社内の人から連絡が来ました
皆川 実はうれしいことに、涙してしまった朝会の回のあと、数名から連絡をもらったんです。
心配の意味も込めて、だったのかもしれません。でも、お会いしたことのない方からも「響きました」と言ってもらえて。
最初、私はめちゃくちゃ反省していたんです。「ここで感情を出すのは違かったんじゃないか」と。でも、会ったことのない人に直接連絡をするって、結構な勇気がいることだと思うんです。それでも連絡をくれた。伝えたかったことが伝わった方がいたんだな、しかもその方はそれを行動に移してくださったんだな、と思いました。
だから、堀川さんがおっしゃるように続けていって、みんなで目標に向かって歩めたらいいなと思います。

朝会は”リアルタイム”、コンテンツは”資産”
堀川 朝会の場でリアルタイムに話すのと、まんまるの輪で記事にするのって、YouTubeと同じ構造だと思っているんです。
コンテンツとして資産が残るから、その資産が働いてくれる。明日も明後日も、自分は何もしていないのに、誰かが記事を読んでくれる。朝会は、その一点で自分のリソースを使う感じ。時間軸で言えば、そこだけなんですよね。
皆川 なるほど。文字なので、言葉より伝わりづらい部分はあるかもしれないですけど、何かしらの感情を乗せて、「おっ」と思ってもらえる記事のほうがいいですよね。時間はかかるかもしれませんが。
堀川 自分は朝会でリアルタイム系というより時を待つタイプな気がします。だから皆川さんとは、同じところまで行っているんだけど、最後の道だけ、僕は右に曲がって皆川さんは左に曲がる、みたいな感じで。でも結局、右に曲がっても左に曲がっても、到達点は一緒みたいな。
まず「いいね」から入る——グッドアンドと、7ヶ月遊ぶプロジェクト
堀川 皆川さんの行動って、たぶん手段としての自己開示だったと思うんです。自己開示を「手段」と捉えると、他のやり方もある気がして。
僕が1年かけてでも成功させたいプロジェクトを頼まれたとき意識したのは、「8ヶ月あるなら、最初の7ヶ月はみんなで遊ぶ。残りの1ヶ月で仕事をして、完成させる。」でした。
もうひとつ、ミーティングの冒頭でグッドアンドニュー。週1のミーティングの場合は、この1週間で新しく始めたこと、良かったことを、まず自分が言って時計回りで回していく。全員のエネルギーが上がったら、そこでミーティングに入る、みたいな。
皆川 いやぁ、めっちゃ良いですね。この間の外部のリーダー研修でも、まさに「グッドアンド」という方法を使おうという話があったんです。誰かが話したときに、まず「いいね」と言ってから、意見を述べる時間に入っていく。
それだけで、みんな笑顔になるんですよね。話しやすい雰囲気になって、関係性が良くなる。そうすると、みんなで話し合って、行動に移って、結果につながる。
さっきの「7ヶ月遊んで1ヶ月集中する」も、まず関係性を育んで、そこから思考に入り、みんなで行動して、結果が生まれる。本当にそのサイクルが回っている。理にかなっているんだなと、いま聞いていて思いました。
堀川 (傾聴がうますぎる……)
1割の出来でも、出してしまったほうがいい
皆川 今考えていることを、一旦は壁打ちのような形で、上司や同僚に投げてみようと思っているんです。おそらく「ここが足りないんじゃない」「もっとここを考えて」と言ってくださると思うので。
自分の中で完璧だと思うものを出すより、ある程度穴があるものを出して、そこからどんどん足していったほうがいいかなと思っていて。
堀川 たしかに。この業界ですごく思うのが、医療人の方々の7割・8割って、他業界の人の12割くらいある感じがするんですよね。業務内容を考慮すると、そうあるべきかもしれないんですけどアウトプットの水準が高いので、自分の中で1割くらいの出来でも、もうどこかに発信や出力してしまったほうがいいと思うんですよね。そのほうが社内だけではなく社会への接点が生まれるのも早くなって、社会からもフィードバックがもらえる。常に社会や時代に適応している薬局だからこそ、どんどんアウトプットもしていきたいです。
皆川 たしかにですね。ありがとうございます。
豊かさとは、たぶん”関係性”のこと
堀川 最近、豊かさって関係性なんじゃないかと思っていて。
人間って「じんかん」とも読むらしいんですけど。僕一人、皆川さん一人のことを人間と呼んでいるんじゃなくて、僕と皆川さんの、その関係の”間”の空間まで含めて、人間と呼んでいるんだろうなと。合理化して聞こえるところもあると思うんですけど、やっぱり関係性に集約するんじゃないかと今回の皆川さんとのこのやり取りで思いました。
皆川 そうですよね。やっぱり、そうですよね。本当にそう思います。
——この日の対談は、質問も章立ても決めずに始まりました。話は途中から、記事の取材からはずいぶん遠いところへ流れていきます。それでも削らずにそのまま載せたのは、順番も脱線も含めて、この日の二人だったからです。
皆川さんの転職と、入社3か月での闘病、そして復帰の話は、次回のまんまるの輪でお届けします。




