2025年4月、まんまる薬局に新卒で入社した薬剤師の粟村 汐梨(しおり)さん。
「地域に関わりたい」と決めた原点は、実は大学1年の夏に体験した介護施設での実習でした。迷い、気づき、学びを経て、いま彼女は“患者さんとその生活”にまっすぐ向き合っています。
本記事では、在宅を選んだ理由から独り立ちまでの道のり、印象に残る介入エピソードまでを余すことなくお届けします。
新卒でなぜ在宅を選んだ?
大学1年生の夏に大学の実習が介護施設であって、高齢の方や障害をもつ子どもたちと関わったことがきっかけでした。
実習の期間は7〜10日しかなかったので、コミュニケーションがあまり取れず、その旨を施設のスタッフの方に話したら、「アルバイトとして関わってみるのどう?」とお話しをもらったんです。
最初は障害をもった方と関わったことがなかったので、こっちから話しかけてもいいのかな?とか相手は話せないのに話しても意味あるのかな?とか思ってました。

しばらく関わってみて、彼ら彼女らは少し苦手なことがあるだけで、自分の意志もあるしみんなと変わらないと知りました。
ですが、外の公園へ遊びに行ったり一般の目に触れるところに行くと、世間からは違った視線を私が横にいて感じました。ーー介護施設でアルバイトをする前の私が持っていた考えに近い眼差しというか…
その経験から、「その子たちらしさ」や「自分らしさ」に焦点を当てて、薬剤師を活かして将来なにかできないかと考え始めました。

1年生のときにそう思ったのですか?
はい。そこから地域に関わりたいという気持ちも出てきました。
同じ大学の医学部の先輩がTwitterで情報を集めていたのを真似て、薬学の情報を集め始めたら社長の松岡さんと1年生の終わり頃に知り合いました。

(約6年越しでその会社に新卒で就職するってスゴイですね…)
入社前に不安だったことは?
特になかったです(笑)
6年前から知っていた薬局というのもあって、松岡さんのお人柄はもちろん、いまはOMF光が丘の管理薬剤師をやられているkobi(小日向優哉)さんの訪問便を見学させていただいたこともあったりしたので。

富山から上京することも不安じゃなかったんですか?
はい。
自分の中で考えちゃう時間が多い方かもしれませんが、「いまがあるということは最終的になるようになるから大丈夫か!」って思っちゃうタイプなので(笑)
訪問の独り立ちまでの道のりは?

4月は座学がメインで、調剤室の業務もダブルチェックで少しずつやり始めました。監査は6月頃から始めて、7月中旬ごろに自分でやっていいよ!となりました。
患者さんのお宅への訪問は3ヶ月ほど一緒に付いてもらってから、ボランチさんと2人で回り始めました。
7〜8月ごろに一人立ちして、最近では上板橋だけでなく、光が丘やひばりが丘の店舗にも行ってます。
同じまんまる薬局でも、店舗ごとに色が違ったり、訪問では地域による特徴が掴めたりするので楽しいです。

いずれは地元で訪問ができるようになればいいなと思ってます!
印象に残っている訪問は?

はじめての訪問から伺っているご夫婦のケースです。奥さまを担当していて、同居のご主人から「最近、奥さんの物忘れが増えた」とのご相談がありました。嚥下の難しさは想定していましたが、デノタスチュアブルのような噛んで服用できる剤形でも、服用方法を忘れてしまい服用できないことがあるというのは想定外でした。介護でお疲れのご主人の様子も気がかりでした。
そこで主治医にご主人のお話しと奥さんの服薬状況について共有し、各薬の服用方法を再確認。姿勢・タイミング・補助飲料の工夫など、奥さまの状況に合わせた服用方法を提案しました。同時に、ご主人とは情報の整理や負担を私たちに打ち明けられる場をつくりました。
それ以降、週1回のわたしたちの訪問がご主人や奥さんの「楽しみ・癒やし」になったことで、笑顔で迎えていただけるようになりました。服薬への不安が和らぎ、在宅療養を前向きに続けられる手応えを感じた、忘れがたい訪問でした。
しおりさんは、今後どうなっていきたい?

他の専門職の方々と連携するとき、”薬剤師としての提案”が弱いのでその力を付けていきたいです。
患者さんごとに薬学的な視点から課題を見つけられても、改善の提案までパッと思い浮かびません。事実の共有だけでなく、提案もできるようになりたいです。
もともとは「社会的処方」を意識していましたが、現場で薬剤師の先輩方が薬剤師の価値を発揮されているのを目の当たりにして、それからは「薬学的な視点から提案できるようになりたい」と強く思うようになりました。
あとがき
在宅訪問の温度を、しおりさんが等身大で届けてくれました。
複数の店舗からヘルプを求められてこなしている活躍ぶりも聞けました。次に会うとき、どんな一歩を踏み出しているのかワクワクです!