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「心に寄り添う薬剤師へ」――MRから在宅医療の現場へ、荒川澪緒さんが歩む想いの軌跡

薬剤師として、そして一人の人間として、患者さんの心に寄り添いたい。そんな想いを胸に、在宅医療の現場で日々奮闘する荒川澪緒さん。薬剤師4年目の彼女が歩んできた道のりは、決して平坦ではありませんでした。製薬会社でのMR(医薬情報担当者)としてキャリアをスタートし、現在はまんまる薬局で在宅医療に携わる澪緒さんに、これまでのキャリアとこれからの展望について、じっくりとお話を伺いました。

偶然の出会いが導いた、MRという道

私のキャリアは、製薬会社「かけん製薬」でのMRとして始まりました。

最初は全く考えていなかった職種だったんです。大学の合同説明会でMRという仕事があることを知って、自分の性格に合っているかもしれないと思ったのがきっかけでした。薬学部で6年間、薬のことを学んでいましたが、実は営業にも興味があったんです。

人と話すことが好きで、相手のニーズを理解して、それに応える提案をすることにやりがいを感じていました。営業と薬学の知識を掛け合わせたMRという仕事は、今振り返ってみても、私にマッチしていた挑戦だったと思います。

薬学の専門知識を活かしながら、医師や医療従事者の方々とコミュニケーションを取る仕事は、本当に充実していました。未知の世界への挑戦でしたが、自分の直感を信じて飛び込んでよかったと心から思っています。

コロナ禍という試練が育んだ、質問力という武器

MRとしての2年間は、まさにコロナ禍の真っ只中でした。

同僚や先輩との接点は限られていましたが、だからこそ「どんな質問をすれば自分が必要としている答えが得られるか?」という考え方が身についたんです。この質問力は、今も仕事をする上で本当に活きています。

限られた時間の中で、いかに効率的に情報を収集し、相手のニーズを把握するか。試行錯誤を重ねながら、質問の仕方や聞き方を磨いていきました。

扱っていたのはヘルニアの新薬だったのですが、ニッチな領域だからこそ、医師に治療法を伝える勉強会を企画したり、初めて使う人へレクチャーしに行ったりと能動的に動く機会も多かったです。

新しい治療法を医師に理解してもらうためには、単に薬の説明をするだけでは不十分でした。患者さんにとってどのようなメリットがあるのか、どのような場面で使用すべきなのか、そういった実践的な情報を分かりやすく伝える必要がありました。

まんまる薬局に入ってからは、会社説明会やPA-C-MANというまんまる薬局・くるーず薬局・パナプラス薬局の3社でのイベント運営に参画させていただいたりと、当時MRで培ったコミュニケーションスキルが役に立っているなと実感しています。

祖父の最期が教えてくれた、在宅医療の価値

MRとして2年勤めた後に、在宅医療の現場へと進むことになりました。

その転機となったのは、祖父の体調悪化でした。祖父が体調を崩していて、入退院をずっと繰り返していたんです。でも、家で過ごしたいという祖父本人の希望があって、家族みんなで祖父の家に集まって最期を見送りました。

祖父は最期まで、家族との会話を楽しんでいました。病院では見ることのできない、穏やかで自然な表情を見せてくれたんです。その時、「住み慣れた場所で過ごすことの大切さ」を心から理解しました。

その直後、転職しようと思っていた薬局との面談で「訪問医療は、治療だけでなく”社会との接点”を届けることにもなる」という言葉を受け、強く共感しました。まさに、自分が祖父と関わった時間に感じていたことに重なりました。

在宅医療は単なる医療サービスの提供ではなく、患者さんが社会とのつながりを保ちながら、尊厳を持って生活するための支援でもある。この気づきが、私を在宅医療の世界へと導いてくれたのです。

在宅医療は、「心を開いてもらうこと」が何より大切

前職でも心がけていましたが、特にまんまる薬局で在宅薬剤師として働く中で、大切にしているのは「患者さんに心を開いてもらえるか」です。

在宅医療では、患者さんのプライベートな空間にお邪魔することになります。そこで信頼関係を築くためには、まず患者さんに心を開いてもらうことが何より重要なんです。

MR時代の経験もあり、医師とのコミュニケーションにも自信が持ててきました。でも、対等に話せているかといわれると、まだまだ課題を感じます。患者さんからだけではなく、医師や他職種の方からも心を開いてもらうためにも、まずは自分から心を開くことを意識しています。

相手の立場に立って考え、相手が何を求めているのかを理解しようとする姿勢を常に持ち続けたいと思っています。患者さんの中には、薬に対して不安を感じている方も多くいらっしゃいます。そんな時は、時間をかけて丁寧に説明し、患者さんが納得できるまで寄り添うことを大切にしています。

信頼関係があってこそ、本当に効果的な医療が提供できると信じています。

今後のキャリアで挑戦してみたいこと

いつか小児の在宅領域にも挑戦していきたいって思ったりしています。

子どもたちって、きっと大人よりもっと「おうちで過ごしたい」って思うと思うんです。子どもたちにとって、家族と過ごす時間、慣れ親しんだ環境で過ごす時間は、治療以上に大きな意味を持つかもしれません。

私自身の祖父との経験を通じて感じた「住み慣れた場所で過ごすことの大切さ」を、より多くの人に届けたいと考えています。

2025年問題などが取り沙汰されていたり、在宅医療の価値がますます高まる中、薬剤師がもっと積極的に在宅医療に関わり、患者さんの生活の質を向上させることで、より良い未来をつくっていければいいなと思っています。

「心に寄り添う薬剤師」として、私の挑戦はまだまだ続いていきます。患者さん一人ひとりの想いを大切にしながら、在宅医療の可能性を広げていきたいと思っています。

やったことないことに挑戦するとか、自分にとってより難しい方を自分で選択して、人として成長していきたいです!